イスラエルが13日にイランの核関連施設を空爆して以来、中東情勢の緊迫感が急速に高まった。日本政府は、米・イラン間の協議や、イラン核問題の平和的解決に向けた外交努力のさなかに行ったとして、イスラエルの軍事的行動を非難した。
対するイランも報復する中、カナダで開催された先進7カ国首脳会議(G7)では、声明でイスラエルの自衛権と安全を強調、むしろ共同でイスラエルを支持する姿勢を示した。さらに、イランを「地域の不安定及び恐怖の主要な要因」と位置付け、核兵器の不保持を改めて強調した。
政府の情報分析と立ち位置の表明、また国民への説明に一貫性はあるのか。
中東への原油依存度が9割を超えるわが国は、ペルシャ湾とインド洋を結ぶ原油輸入ルートの要所、ホルムズ海峡の船舶航行を制御するイランに一定の配慮を示した形だ。灌漑(かんがい)や農業の自立支援をはじめ、長年にわたる政府開発援助(ODA)の実績も大きく、イランとは日本固有の良好な関係も築かれている。
耳目を集めた米国によるイランへの直接軍事介入が21日、トランプ大統領の決断で実行された。中部山岳地帯のフォルドゥ、その地中80~90メートルにある核開発の中枢施設に向けては、地中貫通弾(バンカーバスター)14発が使用された。
G7各国はもちろん、国際社会がイランに厳しい目を向けるのは、1979年のイスラム革命以降、イランがイスラエルを国家として承認せず、「反イスラエル」の国是を掲げている背景がある。
2023年秋以降、パレスチナのハマスやレバノンのヒズボラ、イエメンのフーシがイスラエルを軍事的に挑発したが、イランによる背後からの支援も明らかになってきた。
核拡散防止条約(NPT)の署名国として、イランは民生用の核施設所有の権利を国際法上、認められているのは確かである。イラン自身も平和利用を強調している。だが国際原子力機関(IAEA)は、兵器化に必要なウランの高濃度化を進めていると分析している。イスラエルの国家としての生存権に脅威が及ぶリスクが増大しているのである。
ハマス対イスラエルの対立も民間人の犠牲を含め、凄惨(せいさん)を極めているが、今日顕在化したイスラエル対イランの対立こそ、中東情勢の葛藤の本質的な構図として認識し、情報分析を行う必要がある。
戦争反対を広範囲に唱え、第2次政権を発足させたトランプ氏は、ロシア・ウクライナ問題の仲介にてこずり、中東への軍事介入を余儀なくされる計算違いに直面している。しかし、歴史的経緯や国際情勢の現実など、総合的な見地から情報分析を極め、早期決断を下した模様だ。
原油輸入のシーレーン確保が喫緊の課題である一方、わが国は安全保障のため、東アジア、特に台湾海峡情勢に、同盟国である米国の関心を引き続き保つ必要がある。
複雑な国際情勢において、常に地球儀を俯瞰(ふかん)する視点を持ち、より全体的かつ本質的に情勢を把握し、分析するための情報力の重要性に目覚めるべき時が来ている。
政府は、国家と国民の情報力を底上げするための具体的な方針を示し、国際情勢に効果的に対応していく必要がある。この方針が、国際紛争の解決に向けた外交努力を強調する人々とも深く結びついていることは言うまでもない。(駿馬)






