トップコラム都留市夏狩湧水群を歩く

都留市夏狩湧水群を歩く

太郎・次郎滝

山梨県都留市の夏狩湧水群を歩くために1年ぶりに富士急行線を利用した。目的地の東桂駅は特急富士回遊が止まらないので大月から各駅停車に乗り換える。

驚くことに、ほぼ満席だった。しかも外国人が脚を伸ばし、二人分のスペースを占有している。席を譲る気配がないので先頭車両に移動、やっと席を確保した。

電車の扉には大人気の忍者アニメ「NARUTO」の派手なペインティングが施され、外国人観光客専用車両のようで居心地が悪い。東桂駅に降りた時はほっとした。

1929年開業の無人駅は木造平屋の素朴な駅舎である。駅前には十日市場・夏狩湧水群ウォーキングマップの看板があるだけで閑散としている。

マップに従い、柄杓流川(ひしゃくながれがわ)沿いの太郎・次郎滝に向かった。約2万年前の富士山大噴火で溶岩流が運んだ泥流堆積物でできた断崖から落下する滝は落差30㍍、幅100㍍ほど。断崖の岩肌から富士山の湧水が滴り落ち、静岡県富士宮市の白糸の滝にも似た壮大な滝である。ここも人は少ない。「観光客を呼び込む努力をすればもっと人が訪れるのに」そう思ったが、歩いているうちに気持ちが変わった。

市の南側には桂川が流れ、用水路が街中を網の目のように巡る。「平成の名水百選」に選ばれるだけあって水の恵みが感じられる。寺や神社が多く、湧水がある長慶寺や永寿院には梅花藻(バイカモ)が咲き始めていた。

ここは松尾芭蕉とゆかりが深く、田原の滝近くの芭蕉の句碑には、都留での長い逗留(とうりゅう)が契機となって『奥の細道』『蕉風俳諧』が完成したと刻まれている。

帰路は東桂の隣駅、十日市場駅を利用した。1日の乗降客数90人ほどの無人駅は、車道を外れた奥まった場所にひっそりとあった。市は「富士山や富士五湖もいいけれど、途中にある都留市でニッチな時間を」と呼び掛けているが、観光地化すれば自然や水が汚れる。私の勝手な思いだが、芭蕉の愛した湧水の街であってほしい。

(光)

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