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縁深い「コメと小泉」【上昇気流】

スーパーのコメ売り場を視察する小泉進次郎農林水産相
スーパーのコメ売り場を視察する小泉進次郎農林水産相=23日午後、東京都江東区

「コメと小泉」。何かと縁が深い。小泉進次郎農林水産相は備蓄米放出で話題をさらっているが、父・小泉純一郎元首相は真逆の話で注目された。首相就任後の初の所信表明演説(2001年)の結びに引用した「米百俵」である。

幕末の長岡藩(新潟県)の逸話で、長岡市はホームページに「『米百俵』の精神」の項を立て詳しく紹介している。それによれば、北越戊辰戦争に負けた長岡藩の窮状を知った支藩から米100俵が贈られてきたのが話の始まりだ。

食べるものにも事欠く藩士たちは、これで一息つけると大いに喜び、藩の指導者、小林虎三郎に米の放出を迫った。作家の山本有三は戯曲「米百俵」でその場面をこう描く。

虎三郎は「早く、米を分けろ」といきり立つ藩士たちに向かって「この米を、一日か二日で食いつぶして後に何が残るのだ。国が興るのも、滅びるのも、町が栄えるのも、衰えるのも、ことごとく人にある……その日暮らしでは、長岡は立ちあがれないぞ。新しい日本は生まれないぞ」。虎三郎は米100俵を売却し、代金を学校建設の資金に注ぎ込んだ。

小泉首相は所信演説で「今の痛みに耐えて明日を良くしようという『米百俵の精神』こそ、改革を進めようとする今日のわれわれに必要ではないか」と呼び掛けている。

備蓄米放出が「その日暮らし」だけのものなら日本は立ち行かない。小泉農水相は「虎三郎」なのか「いきり立つ藩士」なのか。国民もまた、問われる。

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