トップコラム身近に起きた教師刺殺事件 フランスから

身近に起きた教師刺殺事件 フランスから

パリ東部郊外ノジャンの中学校で11日、校門前の持ち物検査をしていた教員補助職員が14歳の生徒に刺殺される事件が起きた。筆者が過去に取材したことがある学校だ。

それも、同じ町の別の中学校には、友人が教員補助職員として今も働いている。今の心境を尋ねると「事件後からは朝の校門前の手荷物検査に警官が立ち会うようになった」と答えたが「不安と恐怖が付きまとっている」とも言った。

事件の背景にはSNSの影響があったとして、政府は、15歳以下の未成年がSNSを使用できなくする法案を提出する方針だと言っている。大人の分からないところで、SNS上で憎悪が拡散しているとも指摘されている。

2年前にフランスでは、いじめや暴力対策としてデンマーク発の他者を思いやる共感教育が試験的に導入された。いじめの原因を「他者を思いやる共感力の欠如」とみているからだ。しかし、効果は疑問視されている。子供たちがいつも遊んでいるゲームには暴力性が高いものが多いし、ハリウッド映画にも暴力的シーンが少なくない。

ある専門家は、毎日報じられるニュースはウクライナやイスラエルで起きている戦争で破壊された町で病院に担ぎ込まれる負傷者が連日報じられ、世界の荒れた姿が子供の心を蝕んでいることへの影響は否定できないと指摘する。

教員補助職員の友人は、毎朝、生徒の顔を見るたびに、どの子にも暴力的要素があると疑いの目で見るようになった自分に落胆しているそうだ。(A)

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