トランプ米大統領が次々と打ち出すMAGA(米国を再び偉大に)の施策に全世界が振り回され右往左往している。
米国が永年大事に育ててきた世界の人々の広範な信頼を自ら傷つけている。しかし、この狂乱のMAGAの時代こそ、日本が発展するチャンスと見るべきだ。
トランプ政権が対外援助事業を行う米国際開発局(USAID)大幅縮小に動き、新興・途上国では援助継続に不安が高まる。
過去長年にわたり無駄に中国につぎ込んできた政府開発援助(ODA)をさらに抜本的に見直し、真に援助を必要としている未開発国などに幅広く振り向けることが必要だ。
世界第2位の経済大国の地位は遠い過去となり、米国が果たしてきた対外援助に規模は及ばずとも、日本独自の視点で見ればできることは多い。
欧州や東南アジアとの経済および安全保障連携や新たな資源供給網の開拓・再構築など、国際社会が混乱浮動している今こそ、これまでの米国依存一辺倒の生き方から脱皮する良い機会だ。それが日本の国際社会における地位、信頼度を高める。
ハーバード大学の多くの外国人留学生が、勉学・研究の場を奪われ途方に暮れているという。日本の多くの大学が、既にその救済に手を挙げているが、国家としては殆(ほとん)ど静観の構えだ。もっと大胆かつ積極的に支援すべきだ。
将来の有為な人材の獲得、世界的に広範な人脈の育成・獲得は、我が国にとり大きな財産だ。米国は大事な同盟国だが、その顔色を窺(うかが)うばかりで、独立国家として一本筋の通った戦略的視点が不在だ。
米国が内向きの自国第一主義に走る現在は、国際社会での日本の存在感を高める好機だ。できることは多い。現政権は対米交渉に汲々(きゅうきゅう)とするばかりで、そのような着想は見られない。
関税政策で米国が世界から孤立するような動きを見せ、中国がその隙をついて影響力を高めんとしている。
ヘグセス米国防長官は、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)で演説し、中国が台湾にとって「差し迫った」脅威になっていると警告し、戦争を防ぐため、米国は同盟国と共に「抑止力の強力な盾を築き、友好国との協力のための新たな方法を見つけていく」と約束した。この発言はトランプ政権の最近の動きと一見矛盾するかに見えるが、最近の国際関係の複雑さを表してもいる。
この複雑、浮動する国際環境の中で、世界の国々は対外関係の再構築に挑む。基本的人権を尊重し国際法と世界の秩序を守るため、リーダーシップを発揮できるか。日本外交の正念場だ。(遊楽人)