第三者の精子・卵子を用いて子を授かる「特定生殖補助医療」のルールを定めた法案は今国会での審議入りが見送られ、廃案となる見通しだ。
厚生労働省の資料によると、不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦の数は約4・4組に1組(2021年)。そして、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療で生まれた赤ちゃんの割合は約12人に1人(同年)に達している。
昨年の出生数が70万人を切った「静かな有事」(人口減少)の要因の一つに晩婚化がある。不妊に悩む夫婦の増加はそれと関連しており、生殖補助医療のルールの明確化は焦眉の急だ。
ところが、自民、公明、日本維新の会、国民民主の4会派が共同提出した法案に立憲民主党や共産党などが反対、審議入りは困難となった。事実婚や同性カップルが対象から除外された上、子供の「出自を知る権利」を十分保障していないからだという。
生殖補助医療については、日本産科婦人科学会が内規で法律上の夫婦に限っている。子供の成長への影響を考えるなら、安定した生活が期待できる夫婦に限ることは理にかなっている。
しかし、近年、医療技術で子供をつくる同性・事実婚カップルが散見される。だから、その〝乱用〟に法律で歯止めをかけることは重要課題となっている。
法案反対派は精子・卵子の提供者について「子供の出自を知る権利」が不十分だとして、子供の立場で考えているかのような姿勢を取るが、それは医療を受けたい側に立っていることは示しても、子供の人権・権利を十分考慮しているとはとても思えない。
生殖補助医療で生まれた子供が成長してから「自分もお父さん、お母さんが欲しかった」と訴えたら、同性カップルにも認めろと主張する人は何と答えるのだろう。「そう言わせる差別的社会が悪いのだ」とでも言い張るのか。
(森)