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サスペンス小説『ジャッカルの日』など数々の世界的ベストセラーを送り出してきた英国の作家、フレデリック・フォーサイス氏が86歳で亡くなった。スパイ小説を中心に25冊以上の本を書き、世界で7500万冊を売り上げた。
空軍の戦闘機乗り、BBCやロイター通信の記者そしてフリージャーナリストを経て、第1作『ジャッカルの日』を発表。それまでの取材経験が作品に迫真性を与える上で大きな役割を果たしたようだ。
しかし、それだけではなかった。2015年に英紙サンデー・タイムズのインタビューで、20年以上、英秘密情報部(MI6)の協力者だったことを明らかにした。ナイジェリアの東部州が分離・独立を宣言した「ビアフラ戦争」を取材中の1968年に、MI6と初めての接触があったという。
世界的な人気作家が諜報(ちょうほう)活動に関わっていたことに驚いた人もいるだろう。だが、英国では作家がスパイだった例は少なくない。
サマセット・モーム、グレアム・グリーン、そして「007シリーズ」のイアン・フレミングらも諜報員だった。
英作家アンソニー・マスターズは『スパイだったスパイ小説家たち』(永井淳訳、新潮選書)で「作家とスパイの間にはある種の技術的、情緒的類似性がある」と書いている。「一人の作家の半分は社会でふつうの生活をし、あとの半分は観察し、情報を集め、空想にふける」。そういう意味で「作家は生まれながらのスパイ」であるという。