トップコラム初期宇宙の巨大な銀河【上昇気流】

初期宇宙の巨大な銀河【上昇気流】

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した 111 億年前の初期宇宙の棒渦巻銀河「J 0107 a」(写真左)とアルマ電波望遠鏡で撮影されたJ 0107a内部のガスの分布(同右)(米航空宇宙局=NASA、ALMA提供)

宇宙の観測技術は長足の進歩を遂げ、138億年前の宇宙創成に近い時期に生まれた銀河の画像が一般の人の目にも触れるようになった。

このほど国立天文台などの研究チームは、111億年前の初期宇宙で見つかった巨大な銀河「J0107a」の内部を南米チリのアルマ電波望遠鏡などで捉えた。この銀河の内部で見えたものは、大量のガスが激しく吹き荒れる様子だ。

中心から半径2万光年の範囲で、秒速数百㌔という高速のガスの勢いで星が生まれていることが明らかになった。その両端から渦巻きの「腕」が伸び「棒渦巻銀河」と呼ばれる(小紙5月23日付)。

内部は爆発的な勢いだが、全体としてまとまりがあるのは、暗黒物質(ダークマター)の作用によるのではないかという。未知の物質だが、宇宙に大量に存在していてその重力で銀河の形を維持しているとされる。

宇宙全体を貫く太い1本の心棒があるかどうか分からないが、星の集まりである銀河は宇宙の最も基本的な構成要素。人間の身体の成長について臓器や器官の発達を辿(たど)ると分かるように、銀河の成長過程を知れば宇宙の実体が明らかになるのではないか、というのが今日、天文学の研究の方向性だ。

観測データの積み重ねが必要だが、今回の発見は宇宙の成長の歴史に新たな知見を加える成果。われわれも初夏の夜空を見上げ、静的な宇宙と動的な宇宙の調和の取れた姿を感得することができれば幸いだ。

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