
トランプ米大統領が「ゴールデンドーム」という新たなミサイル防衛構想をぶち上げた。中国やロシアなどの核ミサイルから米本土を防衛するのが狙いだ。相次ぐ過激発言に隠れて、いまひとつ注目を浴びなかったが、今後の世界の安全保障に大きな転換をもたらすものだ。
ミサイル防衛といえば、1983年にレーガン大統領(当時)が打ち出した戦略防衛構想(SDI)を思い出す。これは当時大きな反響を巻き起こした。大気圏外を経由して飛来する核弾道ミサイルには、同様のミサイル発射で報復するとして攻撃を思いとどまらせる、いわゆる相互確証破壊(MAD)戦略からの転換だったからだ。
従来の核政策では恐怖の均衡で辛うじて「平和」が保たれる状況だった。これを脱し、大気圏外などに配備された幾層もの迎撃システムで核弾道ミサイルを無力化する構想だ。
これには当時のソ連が強く反発しただけでなく、同じ米国内の保守派からも「発射された弾丸を弾丸で撃ち落とすようなもので不可能」といった反対論が噴出した。
しかし、ソ連はSDIに対抗する大幅な核戦力増強や技術革新のために経済難に陥り、冷戦終結への道をたどった。「SDIがソ連帝国の崩壊を招いた」と言われるゆえんだ。
「核廃絶」は人類の願いだ。だが、それを呼び掛けるだけでは実現できない。「レーガン氏が約40年前に始めた任務を真に完了させる」。3年以内の完成を目指すトランプ氏の挑戦が続く。