トップコラム象の皮膚まねた冷却タイル シンガポールから

象の皮膚まねた冷却タイル シンガポールから

東南アジアを旅する時、最上階や南側の部屋は極力、避けるようにしている。日中、南国の太陽に熱せられ、夜、寝ようとしてもこうした部屋だとオーブンの中にいるようでなかなか寝付けないのだ。

ラオスのルアンブラバンの安宿に泊まった時は、4階建て最上階の南向きの部屋だった。瓦屋根があって天井が高ければ、それほどでもなかったかもしれないが、この宿は屋上のコンクリートがそのまま最上階の天井になっており、日中、太陽から受けた熱を翌朝まで保持していた。

シンガポールの南洋理工大学(NTU)はこのほど、エネルギーを使用せずに建物を冷却できる菌類タイルの共同開発に成功したと発表した。

このタイルは、菌類を繁殖させる菌糸体と栄養源となる竹の木くずを原料に作られたもので、従来の断熱材よりエネルギー効率に優れているとされる。

NTUがひと工夫したのはタイル表面に凹凸のあるシワ模様を施したことだ。これは象の皮膚構造をまねたものだ。象は汗腺を持たず汗をかくことがない。哺乳類で汗をかくのは人間と馬だけだ。その代わり、象は皮膚のシワや溝といった凹凸構造を利用して体温を調節している。菌類タイルはこの象の皮膚をまねて、建物の温度上昇を抑えようというものだ。

ラオスにはその昔、ラーンサーンという「百万頭の象の国」という意味の王国があった。象は昔、森においてはブルドーザーであり有事には戦力となった。ラオスの象は激減しているものの、建物の壁に省エネ型「象の皮膚」が張り巡らされる日がやってくるかもしれない。(T)

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