トップコラム捏造された中国史【上昇気流】

捏造された中国史【上昇気流】

4日、厳重な警備態勢が敷かれた北京の天安門広場(時事)

比較思想の分野を開拓した仏教学者、中村元の代表作に『東洋人の思惟方法』がある。仏教の受容形態を手掛かりにインド人、チベット人、中国人、日本人の思惟方法の特質を描き出している。

この中で、中国人のことはシナ人と表記した。その理由は、シナというのは「古来から存在するひとつの偉大な文化圏」のことで、政治的な単位の中華人民共和国とは別のものだからだ。

現在、中国の一部になっているチベットや満州や内モンゴルは、中国の中心となった漢民族のシナとは文化的に異なっている。「中国4000年」という言葉があるが、これが広まったのは1980年代以降。

中国が国を挙げて取り組んだ「夏商周年表プロジェクト」などによるもので、歴史の連続性を強調した。だが、それは事実ではなく、捏造(ねつぞう)と批判する学者もいる。静岡大学教授の楊海英さんもその一人だ。

著書『中国を見破る』(PHP新書)で、中国史は非連続的なので「中国史=漢族史」は成立しないと批判。中国人の大多数を示す漢族の概念は、20世紀に誕生したものだったという。

清朝末期、日本にやってきた留学生たちが、万世一系の天皇家の歴史に出会い、その歴史観に憧れて、古代から続く一本の流れを設定しようと生み出したのが漢族だった。その後、中国共産党の政策により、少数民族の固有の文化は弾圧され続けた。現在の内モンゴルのラマ教は、政府で管理された観光用のみだ。

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