
69歳女性。罪名は窃盗、累犯8入。人生の長くが「ムショ暮らし」。IQ(知能指数)54。知的障害が疑われる――。こんな受刑者の話を刑務所の福祉専門官(社会福祉士)からお聞きしたことがある。
累犯8入とは刑務所に8回入ったことを指す。今月1日に懲役と禁固を「拘禁刑」に一本化する改正刑法が施行されたので思い起こした。
「女性は窃盗すれば刑務所に戻れると犯罪を重ねた。生い立ちは両親の離婚、家庭内暴力、学校でのいじめ……。親に甘えたことがなく、コミュニケーションが苦手でした」と福祉専門官は話す。助けを求める気持ちも知識もなく、親族から見放され、刑務所が「居場所」になっていた。
今回の改正刑法は「立ち直り」に力点を置き、受刑者の特性に合わせて24種類の矯正処遇課程を設けている。この女性なら「福祉的支援」(知的・発達障害)や「高齢福祉」が該当する。犯罪の5割近くが再犯だから改正刑法の取り組みは理解できよう。
その一方で、凶悪犯罪への厳しい姿勢も問われている。罪を犯せば罰せられ、それ相応に償う。これは古来、洋を問わない原則である。旧約聖書の神は「人を死なせた者は、必ず殺されなければならない」(出エジプト記)と手厳しい。そんな緊張感や倫理規範が失われれば、犯罪社会を招来せしめるのではあるまいか。
わが国は「地蔵の慈悲」と「閻魔の憤怒」を併せ持つ社会を理想とした。改正刑法の運用もそうありたい。






