トップコラム国民のためのコメ農政を【政界一喝】

国民のためのコメ農政を【政界一喝】

スーパーのコメ売り場を視察する小泉進次郎農林水産相
スーパーのコメ売り場を視察する小泉進次郎農林水産相=23日午後、東京都江東区

コメは昨年夏以来、品薄で価格の上昇が続いていた。この状況は「令和の米騒動」と呼ばれ、国民の主食を巡る政府の対応が期待された。しかし、備蓄米の放出は遅れ、その後も利権が絡む「競争入札」などの影響で、状況は一向に改善されなかった。

長期間にわたるコメの高騰により、 国民の政府への不信感は高まっていた。そんな最中、江藤拓農水相が「私はコメは買ったことがありません。…まさに売るほどある」と発言したことが波紋を呼び、事実上の更迭に追い込まれた。

支持率の低迷が続く石破茂政権には、数々の問題が内包されていると指摘されてきた。しかし、 国会では野党による各閣僚への追及が十分に行われなかった。オールドメディアの扱いも同様で、多くの課題は解決に至らず、国民が犠牲になった。コメ問題は、石破政権の国民との乖離(かいり)を象徴する出来事である。

そこには、6月の国会会期末までジリ貧の少数自公政権を生かす方が参院選で有利だとの野党各党の思惑も働いている。コメ問題の解決の遅れは、野党にも大いに責任があるのだ。

小泉進次郎衆院議員が農水相に新任されると、コメの店頭価格改善に関するメディア報道が目立つようになった。備蓄米を店頭価格で5キロ2000円にしたいと明言し、これを受けて世論調査でも国民の期待感が滲(にじ)み出ている。JA全農(全国農業協同組合連合会)が9割以上を高価格で落札していた「競争入札」に代えて、政府が売り渡し先と価格を決定できる「随意契約」にすることになった。これにより備蓄米の低価格化が実現し、コメ高騰が抑えられる可能性が高まった。

農水・財務官僚の統率の下、誰でも実施できるはずの対策であったが、 一気呵成(かせい)に実現した小泉氏が今後、成果をアピールできる局面に向かいつつある。

5キロ2000円で備蓄米が出回ると、買い溜(だ)めを含めた需要が高まるだろう。その後、どうなるのか。消費者の不満の背後で、むしろベース価格の高止まりに内心期待してきた農水利権関係者との軋轢(あつれき)が生まれるかもしれない。また、減反政策(2018年に廃止)の名残である都道府県ごとの生産調整についても検証が求められるだろう。

岸田・石破自公政権、いや、国会を含む日本政治全体の対応が遅れた結果、コメの品薄と高騰に対し消費者の不満が募る期間が続いた。だからこそ、 国民はコメ農政の根本問題にも目を向けるようになった。主食であるコメが安定的に確保できないかもしれないという食糧安全保障の危機意識にも目覚め始めたのだ。

コメ農家の減少、高齢化、小規模農家の経営難に加え、農政の利権構造や不透明な価格形成など、この機会に国民全体の問題として広く認識されつつある。

何より、 日々の主食の確保に関して、 国民は危機意識を持ち始めており、これまでの農政の問題点にも目が向いている。それは来る参院選の選択にも少なからぬ影響を及ぼすはずだ。

自公政権が急場の米価高騰を抑えるだけで満足し、自ら種を撒(ま)いてきた農政の根本問題に切り込まなければ、手痛いしっぺ返しを食らうしかない。利権やしがらみを離れ、己を虚(むな)しくすれば、農家と消費者がともに納得し、国益にもかなう解決策、真の国民のための解決策が必ずあるはずだ。(駿馬)

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