トップコラム便利すぎる今時の山アプリ

便利すぎる今時の山アプリ

5月下旬、雨の狭間(はざま)に神奈川の丹沢山地西部にあるシロヤシオ(ツツジ科の低木)で知られる檜(ひのき)洞(ぼら)丸(まる)に登った。2年前、シロヤシオの当たり年に登った時より人がかなり増えていた。

平日の朝一番のバスは大入り満員。80分立ちっぱなしで揺られ、登山口に着くと人で溢(あふ)れ返っていた。登山者は女性が7割、しかも白髪交じりの70代。低山ブームの牽引(けんいん)役はシニアの女性ではないかと思うほど。

こうした特定の山に人が殺到する状況は、お勧めの山情報がネットで流れるようになってからか。昨今の低山ブームは多分にネットがつくっている節がある。

それでも、山の空気や萌黄(もえぎ)色の新緑に浸ると身体の細胞が元気になる。鳥のさえずりを聞きながら気持ちよく登っていると、分岐路の手前辺りで突然、後方から機械音が聞こえてきた。

「まもなく分岐、右に進んで下さい」。しばらくすると「出発して1時間、そろそろ休憩を」という音声案内。最初は面白いと思うが、自然の音をかき消す迷惑音でもある。

登山で大きく変わったのは山アプリを使うようになったこと。目的地を指定し、音声ナビの通りに歩けば地図が読めなくても心配ない。自分が歩いているルートを確認できるだけでなく、道を外れた時はスマホが親切に教えてくれる。

さらに家族など第三者が登山者の位置を確認できる見守り機能付きのもある。シニアのソロ登山者には有難い。これなら初めての山でも安心して登れる。とは言え、山歩きで〝ながらスマホ〟は、転倒や踏み外しの危険につながる。それに若い登山者を見ていると、写真を撮ったり標高や天候、ルートや時刻を確認したり、常に忙しい。

これでは周りの風景や自然の音が入ってこないのではないかと心配になる。スマホを使いこなせていないシニアのひがみかもしれないが、便利すぎる山アプリは登山の醍醐味(だいごみ)を半減させる。山に入ったら静かに山を歩きたい。

(光)

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »