漫才コンビ「昭和のいる・こいる」のツッコミ役で人気を集めた漫才師の昭和のいるさんが亡くなった。88歳だった。相方のこいるさんが2021年に77歳で亡くなっており、最後の昭和の漫才師ともいうべき人だった。
のいるさんの話をこいるさんが聞き流し、「しょうがねえ、しょうがねえ」を連発し笑いを取った。「はい、はい、はい、はい。とりあえず謝っておこう」と、こいるさんが演じるいいかげん男には、鋭い社会批評も含まれていた。
コンビがブレークしたのは、そんな時代の空気とぴたりと一致したためだろう。多くの日本人、特に中高年の男性が身につまされる要素も多かった。そんないいかげん男もなぜか憎めない、愛すべき日本人という気分がこのコンビを支えていた。
笑いのほとんどは、ボケ役のこいるさんが取るが、それを引き出すのいるさんの存在が大きかった。一時のいるさんが病気で入院していた時、こいるさんが女性の漫才師とコンビを組んだことがあったが、面白くなかった。女性漫才師も笑いを取ろうとして結局、相殺されている感じであった。
のいるさんには、ほのぼのとした独特の味があった。基本に昔ながらの良識があり、それが崩れていくこいるさんとの対照で面白さが際立った。その呼吸が絶妙だった。
のいる・こいるは、名前だけでなく、実際に昭和の薫りを漂わせるコンビだった。のいるさんが亡くなり、昭和100年のこの年、古き良き時代がまた遠くなった。