トップコラム原子力の夢、国民に語れ【上昇気流】

原子力の夢、国民に語れ【上昇気流】

全国の原発から出た使用済み核燃料の再処理で発生した高レベル放射性廃棄物が、一時貯蔵施設のある青森県六ケ所村に運び込まれて今年で30年。最終処分場の選定は難航している。宮下宗一郎青森県知事が時事通信のインタビューで「国が主体性を持って事業者と連携して解決していく課題」と決断を迫っている。

2017年には全国の地層の特徴を示した「科学的特性マップ」が公表された。20年に北海道の寿都町(すっつちょう)と神恵内村(かもえないむら)、24年に佐賀県玄海町で第1段階の文献調査が始まり、北海道の2町村は適性が認められた。第2段階の概要調査、第3段階の精密調査に関してもスムーズな展開を願いたい。

エネルギー問題は国の根幹に関わる。政府は使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」の実現を目指しており、宮下知事が「核燃料サイクルの輪の完成は最終処分場がなければ達成し得ない」と言うのをしっかり受け止めるべきだ。

原発反対派の中には、核軍縮運動の流れを引き合いに出して「処分地を提供することは核拡散を認めることになる」と決定を遅らせようとする者もいる。

しかし今後、AI(人工知能)などがより普及し、電力需要の著しい増加が予想される。また原子力は原発だけでなく、さまざまな科学技術に使われるエネルギーだ。

高レベル放射性廃棄物の出ない核融合炉などへの転換も含め、政府や事業者は原子力研究開発の展望を示し、多くの国民を味方に引き入れることだ。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »