
沖縄を訪れたことのある人なら、一度はハイビスカスの鮮やかな姿に目を奪われたことがあるだろう。南国の日差しを浴びて咲く鮮やかな花々は、赤、ピンク、黄色、オレンジと多彩な色を持ち、島の風景に自然と溶け込んでいる。だがこの花は、単なる観賞用の植物にとどまらず、沖縄の文化や暮らしとも深く結び付いてきた存在だ。
もともとハイビスカスはハワイなどの太平洋諸島が原産とされ、日本には江戸時代に伝わったといわれている。沖縄にはその後、観賞用として仏桑花(ブッソウゲ)が広まり、現在では1000種以上のハイビスカスが県内各地で栽培されている。
この花には、実はちょっとした「恋のサイン」の役割もあることをご存じだろうか。ハワイなど南国の文化では、ハイビスカスを髪の右側に着ければ「未婚」、左側に着ければ「既婚」の印とされる。沖縄でもリゾートウエディングや観光地で、この風習に倣ったファッションを見掛けることがある。
ハイビスカスを愛してやまない筆者は先日、沖縄本島西に浮かぶ伊江島の「伊江島ハイビスカス園」を訪れた。ここでは約1800種のハイビスカスが植栽されており、その規模と多様性は国内有数だ。園内では、沖縄の亜熱帯気候が育んだ原種や、海外の園芸種との交配によって誕生した珍しい品種なども観賞でき、花好きにとってはまさに楽園といえる。
ハイビスカスは、一日だけ花を咲かせては散る「一日花」として知られる。日々咲いては散るハイビスカスのはかなさと力強さに、戦争や災害を乗り越えながら力強く生きてきた沖縄の人々の姿が少し重なって見えた。沖縄を訪れる際はそんなハイビスカスの美しさをぜひ堪能してもらいたい。
(K)