
自宅ベランダの壁にツバメが巣を作っていた。このところ朝に鳥のチュンチュンという鳴き声がやたらと聞こえるので、見るとヒナにひっきりなしに餌を運んでいたのだ。よく見る光景だろうが、まさか自宅で見ようとは。
ツバメは縁起のいい鳥と言われる。それはいいが、フンなどで汚されても困るなということが頭をよぎった。ところがツバメは鳥獣保護法で保護されており、許可なく巣を撤去したり卵やヒナを傷つけたりすることは禁じられているようだ。
そうだろうなと思う。餌を取りに早朝からかいがいしく飛び回る親鳥の子育てぶりには微笑ましいというか、ご苦労さんという気持ちが先立つから、ある意味応援の声も掛けたくなる。こちらが窓を開け見守るのを警戒する様子もなく巣へ直行する。
ツバメは春から夏にかけて繁殖期を迎える。冬になると東南アジアなど暖かい地方へと渡って行くから、巣作りから子育てまでここでの生活は一時的だという。ツバメの側からすれば、差し当たり安全な場所だろうと思ってくれたのかもしれない。
近年はクマをはじめ里に出没する動物の、いわゆる獣害の問題が深刻になってきた。それぞれの事情が織り成す人間界との距離間(感)をどのように自然界の中で調和させていくのか。
ツバメは住人の思惑を知らず子育てに勤(いそ)しむ。こちらもしばらく見守っていくしかないと思い定める。「燕来る 軒の深さに 棲みなれし」(杉田久女)