トップコラム世代を超えた「慰霊の旅」【美ら風】

世代を超えた「慰霊の旅」【美ら風】

天皇、皇后両陛下はおきなわ工芸の杜で造形ワークショップを視察された=2022年10月23日午後、沖縄県豊見城市

6月上旬、天皇、皇后両陛下が沖縄を訪問される。各種報道によると、今回は愛子内親王殿下も同行される見通しとのことで、これが実現したら、内親王殿下にとっては初めての沖縄御訪問となる。戦後80年の節目の年に、天皇家が2世代で「慰霊の旅」をされることの意味は大きい。

戦後、昭和天皇の沖縄御訪問は叶(かな)わなかったが、那覇市の神社・波上宮の境内にある昭和天皇の御製碑「思はざる 病となりぬ 沖縄を たづねて果さむ つとめありしを」からは、陛下が最後まで沖縄の事を思われていたことがうかがえる。

戦禍に倒れた英霊の御霊や、家族を失った遺族らの気持ちを慰めるため、全国を巡行された陛下の沖縄への想(おも)いを引き継がれたのは上皇陛下だった。

明仁親王殿下(上皇陛下)は皇太子時代の1975年、戦後沖縄を初めて訪問され、慰霊の旅を始められた。ひめゆりの塔で過激派から火炎瓶の襲撃を受けられながらも、慰霊の足を止めることはなく、同日談話を発表された。

「払われた多くの尊い犠牲は、一時の行為や言葉によってあがなえるものではなく、人びとが長い年月をかけて、これを記憶し一人ひとり、深い内省の中にあって、この地に心を寄せ続けていくことをおいて考えられません」

その思いは今上陛下にも引き継がれ、今年は小笠原諸島の硫黄島を訪問された。さらに沖縄、広島、長崎と、戦後80年の慰霊の旅をされる。

2月の誕生日会見で陛下は、「悲惨な体験や歴史が伝えられていくことが大切」と語られ、次世代への歴史継承の重要性に言及された。その意味で、両陛下と愛子内親王殿下の親子2世代による沖縄御訪問は、大変意義深いものとなるだろう。(K)

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