トップコラム復興へ「山」を動かす【上昇気流】

復興へ「山」を動かす【上昇気流】

「でか山」を背に記念撮影する高木純二さん(左)と妻敏子さん=2002年5月石川県七尾市(敏子さん提供)

能登半島地震で昨年中止となった石川県七尾市の青柏祭「でか山」行事が2年ぶりに行われた。復興への願いを込めて、世界無形文化遺産に登録されている巨大な山車(だし)が、まだ地震の傷跡が残る市内を巡った。

若い衆の唄う木遣(きや)り、「えんや、えんや」の掛け声に「地震なんかに負けられん」の思いがこもっている。高さ12㍍、重さ20㌧の山車だから簡単には動かない。それでも人々が力を合わせて綱を引くと少しずつ動きだし、あとは一気に勢いがつく。まさに「山が動く」のを見るようだ。

能登は祭りの盛んな地域で、町や村ごとに個性豊かな祭礼が受け継がれてきた。能登町小木港の「とも旗祭り」は、大きな幟旗を立てた漁船が九十九(つくも)湾内を巡り壮観だ。夏になると巨大な灯籠を担ぎ回る「キリコ祭り」が地域ごとに行われる。

勇壮で荒々しい祭りが多く、主役は青壮年男子。女性は裏方に回り、時に花を添えるというものが多いが、女性の働きなくして祭りは成り立たない。子供たちもお囃子(はやし)などで参加する。老若男女が力を合わせて初めて可能となる。

伝統の祭りを続けていくには、世代間の継承や地域の絆が欠かせない。そして復興を軌道に乗せるにも、まず地域のコミュニティーが維持されるかどうかが大きい。共同体の要になっていたのが祭礼だが、能登は特にその傾向が強い。

地震以後の各町村の祭りは、復興への景気づけにとどまらない。共同体を維持できるかどうかが懸かっているのだ。

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