トップコラム江戸の粋を継ぐ菊五郎に【上昇気流】

江戸の粋を継ぐ菊五郎に【上昇気流】

襲名披露の「古式顔寄せ手打式」であいさつした尾上菊之助改め八代目菊五郎さん(前列中央)=4月29日、東京都中央区(松竹提供)

歌舞伎の尾上菊之助さんが八代目尾上菊五郎、息子の丑之助(うしのすけ)さんが六代目菊之助を襲名した。菊五郎は市川團十郎と並ぶ江戸歌舞伎の大名跡。人間国宝の父はそのまま七代目菊五郎を名乗る。

いよいよ戦後生まれの團十郎、菊五郎が揃(そろ)うことになり、歌舞伎も新時代を迎えることになる。きょうから東京の歌舞伎座で始まる襲名興行の「團菊祭五月大歌舞伎」では、昼の部「勧進帳」で團十郎さんが武蔵坊弁慶、新菊五郎さんが富樫左衛門を演じる。夜の部「弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)」では菊五郎さんが弁天小僧、團十郎さんが日本駄右衛門。

代々の菊五郎、團十郎が芸を磨き、役をつくり上げてきた人気演目で、評論家はもとより観客の見る目は決して甘くはないだろう。それだけに新時代の團菊がどんな舞台を見せてくれるか楽しみだ。大袈裟(おおげさ)に言えば、歌舞伎界の将来を占う公演である。

伝統芸能である一方、大衆娯楽として興行を成功させなければならない。時代の変化も激しい。役者の魅力とそれを贔屓(ひいき)にする観客によって支えられているのが歌舞伎だが、團菊を筆頭に実力と魅力を持つ若手俳優は少なくない。

新しい才能が、伝統的な演目の様式や型を受け継ぎながら、それぞれの新しい味を出していくというのが、歌舞伎の面白さだ。

七代目菊五郎さんの弁天小僧「知らざぁ言って聞かせやしょう」のセリフは何度聞いてもほれぼれする。八代目はどんな江戸の粋を演じてくれるだろう。

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