トップコラム駆け込み劇に見る国民性 米国から

駆け込み劇に見る国民性 米国から

米国では、法律が成立してから実施まで約20年の歳月を要した「リアルID制度」が、いよいよ5月7日から施行されることになる。これにより、国内線の搭乗や連邦政府建物への入館には、リアルID準拠の身分証明書が求められることになる。

筆者も運転免許の更新時に手続きし、すでにリアルIDに準拠した免許となっている。これがブッシュ(子)政権の時に決まったものだと知ったのは最近だった。リアルID法は、2001年の同時多発テロを受けて、セキュリティー強化を目的に05年に成立。しかし、各州の対応の遅れや新型コロナウイルスのパンデミックの影響で遅れた。20年前に決まったことであるにもかかわらず、いまだに多くの州でこのリアルIDの取得率が低い状況が続いている。CBSニュースの分析によると、4月中旬の時点で、30の州が70%未満で、特にニュージャージー州はわずか17%となっている。

期限が近づくにつれ、多くの人が駆け込みでリアルIDの取得を急いでおり、各州の車両管理局(DMV)は混雑していることが伝えられる。一部の州では、こうした需要に対応するためDMVが週末にイベントを開催したり、平日の営業時間を延長して対応に当たっている。ニューヨークでは、職員が特別な車両に乗り込み、移動式の窓口を各地に派遣する取り組みも行っているという。リアルID制度の導入を巡るこうしたエピソードは、日本との国民性の違いを象徴する興味深い事例だ。こうした駆け込み劇が起きるのは、米国人は日本人と比べ「何とかなるさ」という楽観的な考え方が根付いているからだろう。この善しあしは別として、何かとギリギリで行動する傾向がある筆者としては、このおおらかな精神に妙な親近感を覚える。(Y)

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