
最近、知人から山で収穫したばかりのタケノコをもらった。ビニールの包みを外すと土の匂いがした。店で売っているような形のいいものではなく、角笛のように曲がっている。
竹の根が土の中で石などに囲まれて窮屈そうに育っている様子が浮かぶ。植物には多少困難な環境でも生育することのできる生命力やエネルギーといったものがある。そのことを、このタケノコの形が示している。
植物の生命力は侮れない。岩の割れ目から木が伸びたり、道路に野菜の種が落ちてアスファルトを押し上げ成長したりするからだ。一時、そのように育った大根が「ど根性大根」などと呼ばれて話題になったこともある。
町の中を注意して歩いていると、雑草や草花がわずかな広さの土の上で育っている姿を見つけることができる。そんなど根性の草花の代表的なものがタンポポである。
都市部ではあまり見掛けなくなった。道路がアスファルトなどで舗装され、生育できる場所が少なくなったことが大きいだろう。しかし、道路のひび割れた箇所や道の端のわずかな隙間に、栄養が足りないので葉も花も小さいが、茎がひょろりと伸びているタンポポを見掛けることがある。
タンポポの花はやがて白い綿毛に変わり、種を飛ばして繁殖する。都会という厳しい環境の中でたくましく生きているタンポポから教えられることは多い。フキノトウやタケノコ、桜の花などと共に春の到来を告げる存在でもある。