トップコラム江戸園芸の拠点、染井【上昇気流】

江戸園芸の拠点、染井【上昇気流】

つつじ

4月中旬から5月初めにかけては、花々が一斉に咲き競う時期。東京都立神代植物公園の「花のイベント情報」にはサクラ類、ツツジ類、ボタン、フジ、シャクナゲ、ハナミズキ、ハンカチノキの名が挙がっている。

正面を入った真ん前が「つつじ園」で、今月30日まで「つつじウィーク」。多いのがキリシマツツジで150余の品種があり、他にもリュウキュウツツジ、サツキツツジ、ヤマツツジと一大コレクションを構成する。

ここの植物会館で興味深い資料を見つけた。「古文献でふりかえる江戸の園芸文化」という過去の企画展の図録だ。神代植物公園の自慢の所蔵品が、江戸時代の園芸文化に関する園芸書の数々。

諸大名の江戸屋敷には大名庭園が造営され、官営民営の花の名所が江戸中に広がり、世界最大規模の園芸センターが染井の地に出現する。現在の東京都豊島区の駒込・巣鴨地域で、江戸園芸の拠点となる植木の里だ。

英国の植物学者ロバート・フォーチュンは「村全体が多くの苗木園で網羅され、(略)世界のどこへ行っても、こんなに大規模に、売物の植物を栽培しているのを見たことがない」(『幕末日本探訪記』)と驚きを記した。

霧島屋伊兵衛は薩摩や上方のサツキ・ツツジを集めて繁殖させ、江戸一番の植木屋に上り詰めた。図解書『錦繍枕(きんしゅうまくら)』(1692年)をまとめ、約300種のサツキ・ツツジの花形を図示した。つつじ園には江戸時代からの花への情熱の系譜があった。

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