トップコラムかつての「長寿の島」はどこに?

かつての「長寿の島」はどこに?

沖縄都市イメージ(宜野湾市)

沖縄はかつて「長寿の島」として世界的に知られていた。伝統的な食文化や、地域の繋(つな)がり、ゆったりとした生活リズムなどが県民の健康を支えていた。しかし近年、ランキングで沖縄は全国下位に沈んでしまっている。

厚生労働省の調査によると、介護を受けたり寝たきり状態になったりせず通常の生活が送れる「健康寿命」が、2022年は沖縄の男性が71・62歳(全国45位)、女性が74・33歳(同46位)と、深刻だ。一体なぜこれほどまでに悪化してしまったのか。県内の医師や大学教授らの分析によると、この背景には、生活スタイルの大きな変化があるという。

戦前・戦中の沖縄県民の主食は、食物繊維の豊富なイモ類などで、低カロリー・低糖質・低脂質な食生活だった。しかし戦後の米軍統治を経て、米国文化の影響が色濃く残った。このためファストフードや加工食品の普及が進み、かつての野菜中心の食事は姿を消していったというのだ。加えて、車社会の進展により、歩いたり体を動かしたりする機会が減り、運動不足も慢性化しているという。

実際に、筆者が沖縄に赴任したばかりの頃、友人が、家から数百メートル先のコンビニに車で出掛けようとしたのを見て衝撃を受けた経験がある。だが気付けば、今は筆者もすぐに車を使うようになっていた(笑)。「沖縄県民は歩かない」ことが、一種の「県民あるある」として定着してしまっているのだ。

かつての長寿の秘訣(ひけつ)は、長い年月をかけて培われてきた沖縄の伝統的な生活スタイルが根底にあった。それらの原点に立ち返り、地域ぐるみで健康を支える取り組みを進めていくことでかつての「長寿の島」の名にふさわしい未来を取り戻すことができるのかもしれない。

(K)

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