トップコラム自由貿易体制守る日米に 【羅針盤】

自由貿易体制守る日米に 【羅針盤】

わが国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している。ロシアは、ウクライナ侵攻に手いっぱいで、当面わが国北方を脅かす余裕はないとみられるが、その危険な体質はウ侵攻で明らかだ。

今次侵略戦争が、どんな結末を迎えるのかいまだ明確な見通しは困難だが、トランプ米大統領のロシア寄りの姿勢からも楽観は禁物だ。

北朝鮮の核開発やロシア接近、中国の度重なる台湾包囲恫喝(どうかつ)・台湾侵略の予行とも危惧される頻繁大規模な軍事演習などからも目が離せない。

しかし、わが国にとって最も重大かつ危険な最近の安全保障環境の変化は唯一の同盟国である米国の激変だ。米国が主導してきた戦後世界の秩序は、トランプ大統領によって破壊されようとしている。

全世界に一方的に追加関税を課す「相互関税」を発動し、貿易を活発にして世界各国の平等な繁栄を図ろうという自由貿易体制を全否定した。

第2次大戦前の1930年代、関税引き上げにより自国産業を守る保護主義が広がり、大戦の一因となった。

戦後は貿易促進のため、関税を含む貿易問題を多国間で話し合い相互に協調する重要性が認識され、その基盤として世界貿易機関(WTO)が設立された。トランプ政権の相互関税は、世界が永年努力してつくり上げてきたWTOのルールや精神に著しく反するものだ。

米国は自由民主主義国家群のリーダーとしての地位を放棄し、ロシアや中国などの強権国家群の仲間入りをしたかに見える。問題は、その米国がわが国の唯一の同盟国であり、最近の変容は戦後のわが国の生き方と相容れないものだが、わが国の防衛が長年にわたり米国に大きく依存してきたことだ。

大東亜戦争の開戦は、当時の米大統領ルーズベルトの姦計(かんけい)に乗せられ第2次大戦に引きずりこまれた大失敗であったが、米国も、当時のアジアの状況を見れば、唯一の共存繁栄の友邦たり得た日本を敵に選ぶという戦略的大失敗を犯した。戦いは、全国民の勇戦奮闘虚(むな)しく日本の敗戦となったが、それまで欧米の帝国主義諸国家の植民地として収奪をほしいままにされてきたアジアなどの諸国家の解放独立の契機となった。

米国は、戦闘では勝者となったが、東欧や中国大陸などの共産化を許し、戦略上は大敗北を喫した。戦後の米国の苦難の多くはこの戦略上の誤りに起因する。強権国家群主導に変化した世界で生き抜くために、貿易立国日本はあらゆる手段を尽くして自由貿易態勢を守り、日米共存の道を探るべきだ。再び道を誤ってはならない。(遊楽人)

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