トップコラムサクラとアーモンド【上昇気流】

サクラとアーモンド【上昇気流】

東京都調布市にある都立神代植物公園にサクラの花を見に行った。中央にある芝生広場の北側の道がサクラ並木でサクラ園もある。ソメイヨシノが多いが、ヨコハマヒザクラ、ヤエベニシダレなど見応えがあった。

自慢の木が1991年に新しい品種として認定されたジンダイアケボノで、ここにあるのがその原木。ソメイヨシノと似ているのは同じエドヒガン系だからだが、開花が少し早く、花色がやや濃く、樹形も小ぶり。

この一角で面白い木を見つけた。名前が記されていなければ、サクラだと思って見過ごしてしまいそうだった。アーモンドだ。枝が上に向かって伸び、花の色が濃い。聖書に「あめんどう」として登場する。

かつて早春にイスラエルを旅した時、ガリラヤ地方でもヘルモン山の麓でも見掛け、日本でサクラを満喫しているような錯覚に陥った。地中海性気候に適した樹木で、日本のような多雨地帯では栽培が難しい。

他の花に先駆けて咲くことから、ヘブライ語の名前シャケドは「目覚める者、見張る者」を意味する。古い時代から栽培され、移動式の神殿「幕屋」の金の燭台の装飾にこの花の形が用いられたそうだ。

日本でもサクラは春の訪れと農耕開始期を告げる花だった。釜江正巳著『花の風物誌』(八坂書房)によると、昔、村人は山に登ってサクラに神酒を供え、豊作を予祝した。桜見の源流だ。これはヤマザクラだったのだろう。里山を歩くと大切にしている土地がある。

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