
沖縄本島の南西に位置する西表島で2月、10年ぶりに飼い主不明で猫エイズウイルス(FIV)に感染した猫が発見された。竹富町は、同島に生息する特別天然記念物イリオモテヤマネコへの感染に危機感を強めている。
同町は絶滅危惧種のイリオモテヤマネコを守るため、島内の野良猫を捕獲し、島外へ移動させる活動を続けており、直近3年間では野良猫は1匹も確認されていなかった。石垣島など、近隣の島から船に乗って上陸した可能性や、人が持ち込んだ可能性もあるとみている。
西表島には現在、イリオモテヤマネコが約100頭ほどしか生息していないとされており、万が一、猫エイズの感染が拡大した場合、重大な事案となることが懸念されるため、同町は対策強化に取り組む構えだ。
イリオモテヤマネコは1994年に、絶滅の恐れがある「国内希少野生動植物種」に指定され、以来同町は、生態系保護に力を注いできた。
イリオモテヤマネコ減少の要因はさまざまあるが、中でも最大の脅威となっているのがロードキル(交通事故)だ。78年から2022年までの間で、100件以上の事故が報告されており、そのうち91件でイリオモテヤマネコの死が確認されている。
夜行性であるため、夜間に事故に遭うリスクが高く、環境省や県などは、飛び出し注意を促す道路標識の設置や、幹線道路を横断する動物用トンネルの設置などを行っている。このほか、有毒な外来生物を捕食し死んだケースなどもあり、行政はあの手この手で対策を講じている。
幸い、猫エイズによってイリオモテヤマネコが死んだ例はまだ報告されていないが、同島で死んだ飼い猫から検出された事例はあることなどから、同町は引き続き警戒を強めていくという。
(K)