小学校の児童、中学校、高等学校の生徒、大学生にとって、3月下旬から4月初めは、新しい生活を始める準備期間だ。とりわけ卒業生は、それぞれ6、3、3、4年間の慣れ親しんだ生活を整理して未知の生活に向かう、ときめきの時でもある。
今年は初孫が小学校を卒業するというので、久方ぶりに卒業式に顔を出した。末の娘の時以来なので20年近くたっている。その時は、海外から戻ってきて初めて見る日本の小学校の卒業式であり、新鮮な驚きを感じたことを覚えている。
筆者の卒業式の記憶は、ただひたすら厳粛で静かな中、校長先生や来賓の方々の長い話を聞かされたというもの。式典を迎えるため、何度も何度も姿勢を真っすぐ保った歩き方、木の長椅子の座り方、卒業証書のもらい方などを練習した。
例えば、座り方は、長椅子に深く腰を掛け、背筋を伸ばし、顎(あご)を引き、膝と膝の間を拳(こぶし)一つくらい空けた両太ももの上に、拳を軽く握って置くことを徹底的に教え込まれた。
もちろん、私語やくしゃみ、喉を鳴らすことまで厳しく禁止された。在校生送辞、卒業生答辞も代表1人が読み上げた。厳粛な式典での所作を身に付けたことはありがたかったが、とても感動的な式とは言えなかった。
それが、娘の卒業式は、卒業生の一人一人が6年間の思い出や感謝の言葉などをリレーで大きな声で述べて、在校生(5年生)も代表者がリレーで送る言葉を述べ、最後に卒業生の歌と在校生の歌を歌い合って、本当に感動的だった。
孫の卒業式ではさらに「生徒ファースト」を徹底させていた。学事報告や来賓の紹介は事前配布の式次第に書かれ、祝電なども廊下に張り出されて「読んでください」の一言で片付けられ、校長先生が簡潔な式辞を述べただけ。後の行事は卒業生と在校生が関わるものに絞り込まれていた。感動した。
(武)