トップコラム大衆消費と富裕層 フランスから

大衆消費と富裕層 フランスから

フランスはもともと階層性が強い社会だった。パリの地下鉄の1等車、2等車が廃止されたのは1991年で、それまではホームに1等車利用者のための車掌控えボックスがあった。

階級社会の英国同様、21世紀に入り、既得権益を享受していた上流階級に属する人々の中身も入れ替わっている。

富裕層が多く住むパリ西方の郊外、ブローニュビアンクールで100年以上前から家具屋を営むブノワ氏は「うちに来る客が家具の値段を見て驚いているが、こちらは安さを売りにする家具屋の値段に驚いている」という。彼の店で売っている3人掛けのソファは最低でも70万円だ。大衆向けの家具屋では平均約7万円と10分の1。

だから、ブノワ氏は「安い家具をお探しでしたら、うちにはありません。50年から100年持つ家具しか売っていません」と前もって言うことにしているという。むしろ、高額の家具が存在することを知らない人が圧倒的に増えている。ITや金融で金持ちになった人種は、かつてのブルジョアとは違う。

大衆消費向けの店が急増する中、高級品は別の分野として生き延びている。昔は金持ちだが富裕層とも言えない日本人がパリでブランド物を買うのに顔をしかめていたフランス人も、今では中国人が高級ブランド品を買うのを平気に思っている。数年使ったブランド品を古物商に売る日本の現象にも目をつぶっている。30年以上前にパリの地下鉄の1等車に乗っていた人種も大きく変化している。

(A)

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