トップコラム隅に置けぬ国民民主【政界一喝】

隅に置けぬ国民民主【政界一喝】

政局が近づいている。今国会は一旦、衆院を通過した高額療養費制度の見直しを参院で修正後、衆院で再審議して凍結へ、という迷走ぶりを見せている。追撃する形で、石破茂首相が公邸で、昨秋衆院選の初当選議員15人に商品券を贈呈した問題が発覚した。予算成立後の4月を見据え、政権交代への攻防が激しい。

もしまとまれば、との高いハードルの条件付きだが衆院多数の野党は、 内閣不信任案を提出して政権交代を窺(うかが)い得る可能性もある。だが6月の都議会選、7月の参院選をにらみ、支持率が低下する石破政権を延命させる、つまり「生(なま)殺し」を狙う思惑が支配的のようだ。

野党第1党だが政党支持率の低い立憲民主に、 野党全体を率いる力はない。仮に近く、首班指名選を行った場合、昨秋に引き続き立憲・野田佳彦代表は、野党から得票を集め切れないのが現実だろう。

ここで注目されるのが国民民主だ。直近のNHK世論調査では、40代の政党支持率で17・4%と、自民(16・8%)をも凌(しの)ぎ、立憲(1・9%)に対しては9倍超の差をつけた。手取りを増やす減税、対決より解決を掲げる国民民主の台頭は鮮烈である。

2021年秋以降、3年半余りの「岸破」(岸田文雄前首相、石破現首相)政権が軽んじ、失った岩盤保守の支持層。これを取り戻さずして、自民は今夏の参院選での惨敗が火を見るより明らかだ。

石破氏を顔にしては戦えないと、大義名分を声を大にして唱えるべき同党改選組。彼らが積極財政や減税政策を共通項に、手を携え交渉を望む相手も、国民民主である。

そこへ国民民主の玉木雄一郎代表を首相に押し上げる構想も飛び交う。年代別の政党支持率で18~39歳、50代、60代でも2位を占める国民民主(同NHK調査)を加えた自公国による連立政権づくりが臆測を呼んでいる。ただし玉木氏には閣僚経験すらなく、調整を要するだろう。

昨秋の衆院選で議席数を7から28へと4倍化させたが今国会、石破政権下では減税政策を十分に反映させられなかった。

玉木氏は来る参院選でなお一層、議席増を果たしたいとして、改選4議席に対してやはり4倍化の16議席を目指す。

選挙に臨むたび、議席を伸ばして政党としての力を蓄えるのも重要だが、いざ連立政権入りが視野に入った場合、経験不足が仇(あだ)となりかねない。

わが国唯一の同盟国、米国ではトランプ政権が外交・安全保障で、欧州、中東の戦乱を鎮火、平定させながら、次第に対中政策に照準を合わせていく中・長期戦略を描いている。効率的に安全保障体制を固めていくため、その潮流に符合する準備を敷きたいものだ。

だが対中外交でわが国は、先の石破首相と王毅共産党政治局員兼外相の会談後、石破氏の述べていない発言を中国側が勝手に発表するなど、昨年来、新たに深刻な情報管理の問題を抱えている。中国の戦略思想で情報戦は、戦争の初期段階と位置付けられる。

政党代表としてSNS発信でも現状、前を行く玉木氏は今月、台湾を訪問し頼清徳総統と会談している。媚中(びちゅう)外交に舵(かじ)を切る石破政権で露呈する脆弱(ぜいじゃく)な安保上の情報戦略を見直す機会を窺う意味でも隅には置けない。(駿馬

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »