
「時間」の不思議を思った人は少なくない。4~5世紀の神学者アウグスティヌスは「いったい時間とは何でしょうか。誰も私に尋ねないとき、私は知っています。尋ねられて説明しようと思うと、知らないのです」(『告白』第11巻第14章)と。
その一方で、人間は古代から天体の周期的な動きで時間を計ることを知っていて、ガリレオ・ガリレイによる振り子の同時性の発見で機械時計も生まれた。言うまでもなく時間の合理的な使い方は、人間生活の中で欠かせない。
その後、原子の周期運動を利用し精密。
時間を計れるようになった。以来、その精度はいや増すばかり。京都市の島津製作所は100億年に1秒しか誤差が生じない「光格子時計」を世界で初めて製品化した。
光による格子を作り、そこに100万個の原子を集めて1回だけ計測すれば、その正確な振動数(時間)を計ることができる仕組み。現在の「秒」の定義の基準となっているセシウム原子時計の100倍以上の精度を持つ。
用途は標高差の計測や地震予兆の早期検知などを想定している。同社の担当者は「将来の社会基盤の核になる可能性を秘めた製品」という。日本が得意とする精密科学追究の挑戦を続けてほしい。
全ての存在は原子でできている。原子力というとエネルギーを思い浮かべる人が多いが、医療やバイオ領域などの発展に貢献できるし、科学から工学への橋渡しも行う。原子力にもっと注目したい。