
全国で「町の書店」が減少し、2024年3月時点で、書店ゼロの自治体は全体の27.7%にもなっている。日本世論調査会の全国調査によると、書店がなくなることに「不安を感じる」と答えた人は64%に上った。
書店減少の原因としてはネット販売の普及やデジタル化などが指摘される。それと以前から言われているのが、公立の図書館が流行作家の新刊小説を優先的にしかも複数購入する「複本問題」だ。
こうした新刊は書店としても売れ筋の本として頼りにしたい。しかし、そのうち図書館で貸し出されると考え購入を控える人も出てくる。書店での売れ行きは鈍ってしまう。
ある地方の市立図書館に入って日本文学の書架を眺めたところ、並ぶのはいわゆる流行作家の単行本ばかり。一方、戦後の純文学系の作家の作品は数えるほどしかない。完全に無料貸本屋化していると感じた。
そうかと思えば、平凡社の東洋文庫などはずらりと揃(そろ)っている。専門的なアジアに関する古典をどれだけ読む人がいるのか。図書館の蔵書の構成としては、どうもちぐはぐな印象を受けた。
年間予算が限られる中、利用者の要望にも応えなければならないし、貸出点数の実績も気になるところだろう。それでも息長く主体的に蔵書を揃えていけば、特徴のあるライブラリーを創ることができるはずだ。知のセンターとしての本来の役割に立ち返り、それぞれのポリシーによってできた特色ある図書館を訪ねてみたい。