トップコラムタラの芽の天ぷら【上昇気流】

タラの芽の天ぷら【上昇気流】

タラの芽

青森県出身の作家、三浦哲郎さんは生前、山菜が好きだったという。東京に住まいがあったが、この季節になると郷里へ戻って山菜採りをする。たくさん採ってきて、数日は山菜尽くし。やがて飽きてしまう。

だが、八ケ岳の麓で山荘を手に入れて、そこを仕事場にするようになると、新鮮なものを食べる分だけ採ってきて、便利だという。山菜の中でも一番好きなのが「たらっぽ」。タラの芽のことだ。

酢味噌(みそ)であえて酒の肴(さかな)とし、少し育った芽は天ぷらにした。随筆集『いとしきものたち』(世界文化社)で紹介している。ところでスーパーの総菜コーナーにタラの芽の天ぷらが並び始め、買ってきて食べてみた。

山菜の王者と言われているが、野菜の天ぷらのような気がした。時間がたっていたせいかもしれない。野菜と山菜とどこが違うのだろうかと考えてしまう。というのも、近所の畑でタラの木を育てていて出荷しているからだ。

山にあろうと畑にあろうと、タラの芽はタラの芽なのだが。最近は野菜化した山菜が多いような気がする。フキノトウも、ユリ根もそうだ。山菜にはなじみがないという地方もある。

旧国鉄マンだった片岡博さんは九州東海岸の大分県佐伯市出身。新潟県に赴任して初めて山菜を知ったという。著書『山菜記』(実業之日本社)はその愛好者になった証しだ。たくさんの山菜が登場する。だが佐伯では、軽くて丈夫なタラの木をステッキとして使っていたそうだ。

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