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政府に政策提言する日本学術会議を現行の「国の特別の機関」から切り離し、特殊法人とする一方、必要な財政支援を行う法案が閣議決定された。活動状況を確認する監事を置き、首相任命とする。
学術会議は軍事、民生双方に用いることができる技術(デュアルユース)の研究を容認する一方、軍事目的の科学研究を行わないとする声明は取り消していない。大学が防衛省からの資金を受け取らないようにする空気もつくってきた。
学問の自由を掲げるのであれば、資金受け取りの可否は研究者個々人が判断できるようにすべきだ。そうでないと個人の発想を活(い)かした野心的な研究は進まない。日本の科学技術力低下の原因はここにもある。
学術会議は法案に対し、会員選考の自主性・独立性や安定的な財政基盤などへの懸念が払拭されていないとする会長の談話を発表している。それを言い張るのであれば、国との関係をきっぱり清算することをお勧めしたい。
国際的な技術競争は激烈で、日本では企業、政府、大学の間での協力関係、特に産学の連携の推進が切に求められている。しかし、大学にそれを牽引(けんいん)する現実的な力はない。
法案では学術会議の会員数が210人から250人に増員されるが、会員はアカデミアのプロがほとんどだ。大学の内部も知り、政策提言もできるので、産官学をつなぐ役割があるのではなかろうか。特定のイデオロギーに基づく運営が目立った学術会議が脱皮する好機だ。