トップコラム多子世帯の大学無償化に効果?

多子世帯の大学無償化に効果?

手をつないで歩く家族

新年度から多子世帯への大学無償化が始まる。扶養する子供3人以上世帯を対象に、私立なら年間授業料最大70万円+入学金26万円、4年間で最大306万円。国公立なら同54万円+同28万円、同244万円が支給される。子供が4人、5人と多ければ多いほど恩恵が大きい。

出生促進を狙った少子化対策だが、果たして対象となる多子世帯はどれほどあるのだろうか。厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると子供3人以上の世帯は全体の2・3%(2022年)と、対象となる世帯は限定的だ。

しかも、子供3人世帯では就職等で第1子が扶養から外れたら対象外となる。当然のことながら、子供が大学等に進学しなければ恩恵がない。例えば、高校卒業後、親が営む農業や漁業を継ごうと考える親思いの子供もいるだろう。あるいは、いったん社会に出てから大学等に入る人もいるだろう。子育て当事者の目線で考えると、釈然としない。

驚いたことに、高校無償化と同じく多子世帯の大学無償化に対しても所得制限が撤廃された。つまり、年収2000万円超の高額所得者層も大学無償化の恩恵にあずかれるわけである。

ところで教育無償化は2019年幼児教育・保育無償化から始まった。当時、所得制限なしの無償化に対して、「教育格差を拡大させる」「親が家庭で保育する世帯への支援がない」といった声が挙がった。結局、「子供は等しく同じ、区別すべきではない」と所得制限なしとなった。

しかし、大学の無償化は保育・幼児教育と比べて支援の額が大きく膨らむ。子育て当事者の立場に立てば、教育費負担が減るからと言って、もう一人子供を持とうとなるとは限らない。日本は男性の4人に1人が生涯未婚である。肝心の未婚対策に本腰を入れず、子育て世帯へのバラマキ的な教育無償化に、幅広い国民の理解が得られているのか、疑わしい。

(光)

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