
東京電力福島第1原発事故から14年、事故の除染で生じた土の最終処分の見通しが立っていない。除染土は現在、福島県大熊町と双葉町にまたがる中間貯蔵施設に保管され、2045年までに県外で最終処分することが法律で定められている。
その量は東京ドーム11杯分。最終処分量を減らすために、放射性物質の濃度が一定水準を下回った土を、全国の公共工事で道路の盛り土などに再利用する方針だ。福島県内で再利用の実証事業が行われてきた。
しかし22年に環境省が東京都新宿区、埼玉県所沢市、茨城県つくば市の3カ所で再利用を検討していると発表し新宿と所沢で説明会を開催したところ、周辺住民や地元町会が猛反発。その後、除染土の受け入れを表明した自治体はなく、宙に浮いた状態だ。
そんな中、双葉町の伊沢史朗町長は記者会見で「まずは県内で再利用に努めることが理解醸成につながるのではないか」と持論を語った。「少しでも(他の自治体の)負担を減らし、ハードルを下げたい」という。
正論であると同時に現実論だ。最終処分はもちろん国が責任を持って進めていくべきだが、いくら法律で県外での最終処分を定めても、受け入れ自治体がないのでは話は進まない。福島県で再利用して何の問題もないことを示せば、他の自治体の首長も住民を説得しやすくなるというものだ。
この問題で議論が沸騰し、反対運動が激しくなればなるほど、反原発活動家の思うつぼである。