
わが国の都道府県別年間降水量のランクを2021年の例で見ると、1、2位が宮崎、高知と太平洋側の県であるのは予想通り。だが3位が福井、5位石川、6位富山と日本海側が続く。意外な感もするが、これは降水量に冬の降雪量が含まれるためだ。
富山県(2609・5㍉)の場合、山岳地域はもっと多く立山連峰は3000㍉を超す。山岳地域の積雪は春から夏にかけて徐々に解け河川に流れ込む。北アルプスに源を発する黒部川は、日本でも屈指の扇状地を形作っている。
その扇状地の裾には、清く澄んだ水に恵まれた湧水地帯が広がる。春先の雪解け水は貴重な水資源となり、特に灌漑(かんがい)用水の重要な供給源でもある。この黒部川扇状地では杉の群生も目立つ。
富山湾は湧水現象がよく観察され、その周辺には魚貝が集って優れた漁場が形成される。北陸地方だけでなく、日本海に面した各県は降雪による同様の恵みを受けている。
今年の正月明けから、特に日本海側の各地に記録的な大雪が降ったことで、市民生活は大きな影響を受け確かに不利益を被った。しかしその報道は、豪雪の脅威ばかりが強調された感がある。自然の摂理はなお図り難いものがあり、降雪の恩恵についても知らせたい。
むしろ今、気になるのは、主に人間の生産活動による気候変動の影響。温暖化などに伴う降雪、積雪量の減少や融雪時期の早期化は、下流域の農業用水の利用に大きな影響を及ぼす可能性がある。