韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

韓半島で豚が飼育され始めたのは、約2000年前と推定される。中国の『三国志魏志東夷伝』を見ると、部族国家である扶余に馬加、牛加、狗加、猪加という官職を置き、それぞれ4方面の地域を治めたという記録がある。「猪加」は豚から取ってきた官職の名前だ。猪突(ちょとつ)的という字もまた、むやみに突進する豚の習性をなぞった言葉だ。
豚は通常、汚くて貪欲な動物と見なされている。しかし、それは誤解だ。豚は何でも与えられるままによく食べるだけで、餌を巡って争うことはない。汗腺が発達せず、体内の水分を尿として排泄(はいせつ)するため豚小屋が汚いだけで、実際は牛や鶏よりも清潔だという。体温調節能力がなく、体を水で濡らそうと汚水の溜(た)まりやぬかるみで転がるだけだ。むしろ豚の夢や豚の貯金箱のように財物を象徴する動物として受け入れられている。
毎年、数字の3が二つ入った3月3日は「サムギョプサル(三枚肉)・デー」(韓国語で「サムギョプ」は3層=三つの重なりという意味)だ。農家所得の増大と豚の消費促進のために畜産業協同組合が指定した非公式の記念日だ。この日に合わせて、全国の流通業者も大々的な割引セールに乗り出す。
韓国人の肉好き、特に豚に対する愛情は格別だ。韓国農村経済院(農経院)によると、昨年、1人当たりの3大(豚、牛、鶏)肉類の消費量は60・6㌔で、コメの消費量56・4㌔を大きく上回った。韓国人は“ご飯の力”でなく“肉の力”(で生きる)という言葉が正しいようだ。
特に1人当たりの豚肉消費量の推定値は30・0㌔に達する。鶏肉と牛肉を合わせた消費量に等しい。特に農経院のアンケートで最も好きな豚肉の部位については「サムギョプサル」と答えた割合が60・0%と、圧倒的だった。韓国人の「ソウルフード」と呼ばれても遜色がない。
豚の人気の秘訣(ひけつ)は満ちあふれている。妊娠期間が114日で、牛の280日と比べてはるかに短く、一度に6~10匹の子を産む。6カ月になると100㌔を超えるほど成長も早い。比較的安価な上に、焼いたり、炒めたり、餃子の具にしたりと、さまざまな料理に活用される。たんぱく質の供給源として必須アミノ酸を含んでおり、ビタミンB群とミネラルも提供する。
ただ、過度な肉の消費は肥満、心血管疾患など、健康問題を引き起こす。バランスの取れた食事の維持が重要だ。
(3月4日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。
「セゲイルボ」