トップコラム鎌倉・瑞泉寺の梅林【上昇気流】

鎌倉・瑞泉寺の梅林【上昇気流】

鎌倉「瑞泉寺」梅の頃

ウメの木には花が咲いて実がなるが、実を収穫できるのは25年程度だそうだ。梅農家では収穫量が落ちると伐採して、新しい木を植える。しかし寿命はもっと長く、庭木としては100年。中には200年以上というのもある。

神奈川県鎌倉市にある臨済宗円覚寺派の瑞泉寺は梅林のある寺として有名だ。鎌倉アルプスを歩いた終点にこの古刹(こさつ)があり、誘われるように訪ねた。市街地から遠いせいか観光客は多くなかった。

後ろは天台山でその麓にある。長い参道を歩いて行くと受付。入った左手に梅林があった。開花はほんのわずか。2月末のことだったが、開花はまだ先らしい。しかし、年により咲き方はさまざまだという。

道は二つに分かれた石段となり、どちらを登っても山門に至る。門をくぐると梅林の花は美しく咲いていた。里山で見掛けるウメとは表情が全く違う。老いてまた老いて、細々と命の炎を燃やしている。

年齢によって人の肌の表情が異なるように、梅林の幹と枝はひび割れ、荒れて、枝ぶりもゴツゴツとして異様。それだけに花々はゆかしく、忍耐、気品、清さ、閑寂を感じさせる。樹齢は不明。

仏殿の脇に「黄梅」というのがあった。黄色の花だが、花弁は退化してほとんどなく、しべばかりが花を構成する珍しい木だ。仏殿後ろの岩の庭は、禅僧、夢窓疎石の作で鎌倉末期のもの。立原正秋はじめ文士たちが愛したという理由が分かる。庭の草木にも禅の気風があるのだ。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »