トップコラム中高生犯罪で「世代差」痛感

中高生犯罪で「世代差」痛感

先月末、生成AIを悪用して携帯電話会社のシステムに不正ログインし、100余りの回線の契約を結び、それを転売して利益を得ていた中高生3人が逮捕された。

テレビのニュースで初報に接したが、耳を傾けざるを得なくなったのは、容疑者たちの顔触れだ。岐阜県大垣市の高校1年生(16歳)、滋賀県米原市と東京立川市の中学3年生(それぞれ15歳、14歳)だという。

一口に中高生といっても、18歳を迎える高3と、中3や高1とは大きな違いがある。3人はまだ15歳前後だ。しかも、3人とも近所の顔見知りではなくて、住む場所がバラバラ。そんな3人がオンラインゲームで知り合って協力し、大胆な犯罪に踏み出したのは、ネット社会を象徴するような出来事だ。

30億件以上のIDやパスワードを秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」を通じて購入し、選別していた。不正契約した回線を転売した利益は暗号資産に換えて得ていた。稼いだ金はオンラインカジノなどで使った。生成AI「チャットGPT」を使って自作プログラムの処理速度を向上させていた……等々。

ネット社会になじめない高齢者の筆者にとっては、新聞やテレビで知った理解し難い「用語」のオンパレードだが、3人の中高生はその「アプリ」や「資産」「人工知能」を縦横無尽に使いこなして、現実社会のシステムに風穴を開けた。これほど世代差を痛感したニュースも珍しい。

しかも、「高度な犯罪方法を考案することで、SNSで注目されたかった」という明確な動機があったという。たとえ逮捕されても、少年法によって起訴されず家庭裁判所に送られ、重罪に問われないことを知っていたのだろう。

日常生活の半分以上「別世界」で暮らす彼らを、われわれ大人はどう教育すればいいのか。そんな思いを持つこと自体がおこがましいのだろうか。

(武)

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