トップコラム競争阻む雇用の硬直化 フランスから

競争阻む雇用の硬直化 フランスから

高速鉄道(TGV)や米ボーイング社を抜き世界トップに躍り出た航空機メーカーのエアバスなど世界的競争力のある先端技術を持つフランス。だが、IT産業での遅れを解消できず、厳しい社会制度などで起業が難しく、若者の間で不満がたまっている。

雇用制度の硬直化は30年前にはすでに指摘されていたが、今では不安定な雇用環境で落ち着いて試行錯誤しながらスキルアップする環境はない。

そこに競争力強化こそ社会発展の原動力と強調するトランプ政権が米国に登場した。フランスの若者の心は大きく揺れている。フランスは何度でもリベンジできる米国とは社会の成り立ちが違い過ぎる。新たな技術により、新たな産業が生まれ、新たな富裕層が形成されるより、既得権益を必死で守ろうとする左派労働者や上流層が強いからだ。

そもそも最初から自由業を選ぶ人はフランスでは少ない。理由はサラリーマンの方が確実に老後までの人生設計をしやすいからだ。雇用主が払ってくれる年金や社会保険を考えると自由業はあまりにもリスクが高い。起業支援の制度は整備されているが、社会が硬直化しているため、スタートアップのリスクは高い。

フランスの企業もクリエーティブであることが強調されている。しかし、学歴や古い価値観の縛りから自由でない場合、新しい価値を生むクリエーティブマインドは育ちにくい。フランスは100年前、芸術を育てる土壌を持っていたが、果たしてそんな土壌は取り戻せるのか。(A)

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »