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国の特別天然記念物トキが再び能登の空を舞うことになった。本州でのトキの野生復帰を目指す環境省は、来年6月の本州初の放鳥地域に能登を選んだ。地元は、トキの野生復帰が地震からの復興のシンボルとなることを期待する。
能登が選ばれたのは偶然ではない。日本産のトキの本州最後の生息地が能登であった。能登のトキ「能里(のり)」は1970年に捕獲され、新潟県の佐渡トキ保護センターに送られるが、翌年死亡する。そんな歴史もあり、石川県は本土での野生復帰に向けて準備を進めてきた。
佐渡の野生復帰事業によって、野生下で生息するトキは現在576羽と推定されている。トキが佐渡の里山を舞う姿が日常的に見られるようになったが、ここに至るまでには、ドジョウなどトキのエサを確保するため、減農薬の米作りを行うなどの環境整備があった。
能登で野生のトキが定着するには、そのような環境づくりが不可欠だ。「能登の里山里海」として世界農業遺産に登録された地域でもあり、定着地域としては最適と言えるが、逆に世界農業遺産としての実質が試されることにもなる。
地震で甚大な被害を受けた能登の中長期的な最大課題は、いかに将来の人口減少を食い止めるかだ。特に若い人たちの流出を留(とど)め、そして新たに若い人たちを呼び込む必要がある。
トキを人々を招く、幸せを呼ぶ鳥にすることできるか。「トキが舞う里山里海」は復興の柱に位置付けられるべきだろう。