トップコラム角を矯めて牛を殺すな【上昇気流】

角を矯めて牛を殺すな【上昇気流】

記者団の取材に応じる自民党の高市早苗前経済安全保障担当相(中央)=12日午後、東京・永田町の同党本部

選択的夫婦別姓制度に関する自民党内の議論が本格化してきた。とりわけ保守系議員から「家族の一体感維持」ができるか強い危機感が生まれている。何となく党内外で容認ムードが広がる中、当然だろう。

別姓導入の一番の理由とされるのが、改姓による仕事上の不都合だ。しかし、率直に言ってそれほど深刻な影響があるのか疑問だ。いや影響大という人のためには、旧姓の通称使用を拡大すればいい。自民が昨年の衆院選で公約に掲げている。

中国や韓国は夫婦別姓だが、これは儒教的父系主義の伝統による。長い歴史の中で家族や社会の秩序の基となってきた。氏制度は、その国の社会の成り立ちの中で整えられてきた。夫婦別姓にすれば女性がより活躍しやすい環境になるというのはあまりに単純な発想である。

経団連は昨年10月に「選択的夫婦別姓の早期実現を求めるシンポジウム」を開催した。残念ながら経団連は、経済を支える基礎に社会、さらに家庭があることを十分に理解しているとは思えない。

生産年齢人口の減少に対しても外国人労働者の雇用、最終的には移民の受け入れを考えるのがせいぜいだろう。少子高齢化の克服や東京一極集中の打破に経済界がどう貢献するかなど、真剣に考えているように見えない。

過激な制度改悪によって「家族のかたち」までが崩れれば、国家社会の基礎が危うくなる。経済自体、健全な発展は望めなくなる。「角を矯めて牛を殺す」愚を犯してはならない。

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