
東京都調布市にある深大寺は広大な森に囲まれた古刹(こさつ)。国宝の白鳳仏、釈迦如来倚像で知られるが、これが発見されたのは1909年。元三大師堂の壇下からだった。
幕末に火災で本堂も大師堂も焼失したが、再建が早かったのは大師堂の方。位置を移して被災直後の1867年に再建された。元三大師が多くの信者を集めていたからだ。正月3日に入滅したのでその名がある。延暦寺第18代座主慈恵大師良源である。
大師堂の本尊が元三大師像で、如意輪観音の化身として悪魔調伏の力を持つと信じられてきた。像は鎌倉時代末ないし南北朝の頃の制作と推定されている。秘仏で普段は公開されず、前回ご開帳となったのは2009年。
1025年遠忌の時で25年ぶりだった。拝観は11月末から12月にかけての1週間。貴重な機会なので出掛けて長い列に並んだが、その迫力に圧倒された。高さ約2㍍の坐像(ざぞう)で、顔は黒褐色で黒人のごとし。
生きた人のように輝いていた。顎が張り、頬骨が出て、唇も厚い。魁偉(かいい)な姿。この坐像に小紙の紙面で16年ぶりに再会した。「特別公開『秘仏深大寺元三大師坐像』」の記事だ(2月8日付)。
奈良国立博物館文化財保存修理所で3年かけて修理し、完成を記念して同博物館で公開中だ(3月16日まで)。『深大寺』(深大寺刊)に掲載された写真と比べ、すぐ分かる修理箇所は数珠。汚れ切っていたが、修理後は新品のようだ。新たな法力を得たことだろう。