韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

2017年に制定された中国の国家情報法には国際的に論議を起こした条項がある。国家安全機関、公安情報機関、軍情報機構を含む国家情報活動機構がすべての組織と公民に支援、協調、協力を求めることができ(14条)、いかなる組織や公民であっても国家情報活動機構に支援、協調、協力しなければならない(7条)というのだ。国家情報活動機構が組織、個人の関連文献や資料、物品を持ってくることができるという規定(16条)もある。
同法は中国のインターネット企業が収集した外国の政府・企業・個人の情報・データが中国当局の手に入り得るという懸念の導火線となった。「法に依(よ)って(依法)」という文句があっても最高指導部、中国共産党、軍部、公安機構の意図と意思に従って法律の乱用が可能なところが中国であるためだ。
中国の生成型人工知能(AI)モデルのディープシークR1。エヌビディアの先端AIチップを一つも使わず、通常の100分の1である557万6000㌦(約81億3000万ウォン)の訓練費用でオープンAIやメタを凌駕(りょうが)する性能で登場した。衝撃と賛辞が相次いでいるが、情報・データ流出という“原罪”論議は避けられないようだ。
ディープシークの情報収集と関連する個人情報保護政策にはオープンAIにはない「利用者が提供するその他のコンテンツ」という曖昧な文句があり、事実上あらゆる情報・データを収集するのではないかという疑問も提起されている。
台湾当局は結局、サイバー安保上の理由を挙げて各省庁と核心インフラ施設にディープシーク製品の使用を禁止したと報道されており、日本でもディープシーク使用を控えるべきだという声が出ている。米ブルームバーグ通信はグローバルサイバーセキュリティー会社アーミスの最高技術担当者の発言を引用して、各政府機関と関連があるところを中心に数百の企業が中国政府への情報流出の可能性と脆弱(ぜいじゃく)な個人情報保護政策を懸念して、ディープシークへの接続を遮断する作業を行っていると報じた。
昨年、韓日対立の問題に浮上したライン(LINE)事態も結局、日本の利用者の情報・データを中国にある子会社の職員が閲覧できる状況が背景の一つとして作用した。われわれもディープシークが安保状況に与える影響があるのかないのか、綿密に検討しなければならない時を迎えている。
(2月3日付)
「セゲイルボ」
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。