
沖縄県の最西端、与那国島。その沖合の水深25㍍付近の海底には、1986年に発見された不思議な地形が眠っている。石を人工的に削ったかのような階段やテラスのようにも見える直線的な壁が連なり、まるで失われた文明の遺跡のようだ。
これは「与那国海底遺跡」「与那国島海底地形」などと呼ばれ、多くの人々の想像力をかき立てる謎に包まれた観光スポットとなっている。
この海底地形が「古代文明の痕跡」だとする説は、発見当初から多くの人々が提唱した。人工的な直線や階段状の構造は、古代ピラミッドや神殿を思わせる。地質学者の間でも「人の手が加えられた可能性がある」とする声もあり、かつてこの場所に文明が存在したのではないかとする考察は後を絶たない。
しかし沖縄県は、現時点で「人為的な痕跡が確認できない」との理由から、遺跡としては認定していない。実際に、水中考古学や地形学の専門家らの大半が「自然にできたもの」だと主張している。
与那国島周辺の地層は、硬い砂岩が水平に重なる「層理構造」を持っており、地震や海流の影響でまるで人工物のような直線的な形状になったとの説が有力だ。これが正しければ気の遠くなるような年月をかけて自然が作り上げた芸術作品なのかもしれない。
人工物か自然の産物か、決定的な証拠はまだ見つかっていないが、いずれにせよ与那国島の海底遺跡が持つ神秘的な魅力は変わらない。ダイビングスポットとしても人気が高く、与那国島を訪れる人々の定番の観光地となっている。
与那国島に立ち寄った際は、未知なる歴史の謎に思いを馳(は)せながら、海の中に広がる光景を眺めてみたいものだ。
(K)