トップコラム倒産件数が1万件超【上昇気流】

倒産件数が1万件超【上昇気流】

2024年の全国の企業倒産件数が11年ぶりに1万件を超え、その大半が中小企業だという。経営者の高齢化や人手不足、原材料価格や人件費の上昇で設備投資もかなわないことなどが影響した。

高度成長期の1964年作、城山三郎の小説に「ある倒産」がある。旋盤工場から出発し独立独歩で伸びてきたが、下請けでもある会社が、大企業の過酷な要求に屈する話。当時の産業構造下、中小企業の悲哀を如実に物語る秀作だ。

時代はその後、バブル経済、崩壊を経て、大企業は下請け企業関係や系列システム解消を進め、身軽さを求めていく。一方、中小企業はというと日本の新産業を担う「希望の星」に。だが今回の倒産件数を見ると、その希望の実現はなお厳しいと分かる。

中小企業といえば、既存の大企業が手を出しにくい事業分野を主に手掛ける独自の技術力、専門性が頭に浮かぶ。技術系では新素材、コンピューターソフト、ロボット技術、環境保全設備などの開発、またリースなどのサービスがよく挙げられる。

独自の経営理念・哲学を持つ経営者の存在も魅力的だ。しかしこの間、刀折れ矢尽きたベンチャー企業も少なくない。

今国会で教育無償化の議論が続くが、単に無償化を善として進めるのでは空疎な感じが否めない。「国を興す」という目的で、学力向上をどう図っていくのかが大事。グローバル化が急激に進む中、強い産業社会を築くには中小企業の人材育成が欠かせない。

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