トップコラム【東風西風】歴代の奥方や姫が愛でた雛人形

【東風西風】歴代の奥方や姫が愛でた雛人形

金沢市の成巽閣(せいそんかく)(国重文)では2月6日から「前田家伝来雛人形雛道具特別展」が開催される。例年、対の雛(ひな)人形と豪華絢爛(けんらん)な雛道具の数々が展示され加賀藩の御細工所の高度な技術に感銘を覚える。

雛人形は武家の間で好まれた「次郎(じろう)左衛門(ざえもん)雛(びな)」で、代表的な人形には由緒書が残り、その来歴が分かる。例えば、250年ほど前の江戸中期、宝暦の頃にさかのぼる「預玄院(よげんいん)所縁」と記された雛人形は、5代綱紀の側室で6代吉徳の生母となった女性から、代々大切に受け継がれてきた。

展示されている雛人形は、奥方らの日常や折々の心情の機微を静かに見守ってきたに違いない。歳月を重ねた今では、色あせてはいるが、愛玩された当時が連想される。

一方、雛道具は藩の御細工所で制作され、匠(たくみ)たちの技術の粋が結集され、目を見張る。表面には梨子地(なしじ)に家紋の梅鉢と唐草紋の蒔絵や螺鈿(らでん)が施されており、果実の梨の肌に似ている事からこう呼ばれた。箱の裏側や中身の細部に至るまで、実に精緻(せいち)に作られ、藩のモノ作りの高度で確かな職人たちの技が見て取れる。

厨子(ずし)棚や書棚、箪笥(たんす)、ご膳なども本物そっくりのミニチュアで、「雛道具は婚礼道具の雛型でもあり、姫君の婚儀にはこれらの道具が、数倍に拡大された婚礼調度とともに一式調えられた」(佐藤光雄館長)という。雛人形を引き立てた雛屏風(びょうぶ)も展示され、前田家の華やかな雛祭りを再現している。

(仁)

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