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居心地のよい里山の森づくり

湖西の里山

1992年の生物多様性条約に基づき、近年、ネイチャーポジティブへの取り組みが盛んになっている。日本語で“自然再興”。生物多様性の損失を食い止め、回復させることを目指す考え方を指している。

先日、ネイチャーポジティブに取り組む株式会社地球環境計画の増澤直さんから、アグロフォレストリー農法によるコーヒー栽培の話を聞いた。

アグロフォレストリーは、森林育成と農業活動を両立させる農法で、樹木が成熟するまで樹木の間に果物や野菜や穀物を植える。単一栽培より複数の収益源を持つため、生産者の収益が安定しやすく、生物多様性にもかなっている。無農薬の自然農法米が日本で人気が高く、同農法のコーヒー豆は世界で争奪戦になっているそうだ。

また、イギリスでは生物多様性を資産と考え、開発前よりも生物多様性が高くなるよう開発業者に義務付けている。各国では一般的に高層住宅は上層階ほど人気が高い。だが、イギリスでは自然環境に近い低層階の方が人気で値段も高いと言う。

増澤さんの会社では川崎市と管理協定を結び、同市麻生区の西黒川特別緑地保全地区で「生き物が賑(にぎ)わい、居心地の良さを体感できる里山の森」づくりをスタートさせる計画を準備している。

西黒川は何度か歩いたことがある。自然の湧水があり、雑木林にクワガタやカブトムシ、谷戸にはゲンジボタル、オニヤンマ、ヤマサナエ、ホトケドジョウ、サワガニなどが生息する貴重な里山である。

子供の頃にはどこにでも見られた自然の里山風景だが、宅地開発で多くが失われた。

ネイチャーポジティブでは、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、50年に完全な回復を目指す。壮大な計画である。自然再興の取り組みは始まったばかり。山の自然を愛する市民として、西黒川の取り組みを支えていきたい。

(光)

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